下段って何?
日々の暦の欄の下の方に記載されている暦注のことを、「下段」または「暦注下段」「暦の下段」と呼びます。

下段に書かれている内容は迷信的ではありますが、古くから庶民に根強く支持されてきました。
平城天皇の大同2(807)年に暦注が廃止されて官製の暦が発行されましたが、まったくの不評で、3年後に暦注が復活しました。
1000年経った明治5年(1872年)の改暦のさいにも廃止されましたが、「おばけ暦」という非公認の暦に引き続き記載され、生き残りました。
太平洋戦争中にも紙不足のため暦注付きの暦が廃止されましたが、戦後は自由に出版されるようになり、現代に至ります。
受死日(じゅしにち じゅしび)
黒日(くろび)、辷日(まろぶひ)ともいい、黒丸日と記載されることも。
最低の大悪日、百事に慎むべき日。
正月の元日がこの日に当たると、行事はすべて翌日に繰り延べられたそうです。
この日に発病すれば、重病になるともいわれます。
凶: 病気見舞い、服薬、鍼灸、旅行
ただし葬式だけは差し支えありません。
十死日(じゅうしにち)
十死、十死一生日(じゅうしいっしょうび)、天殺日(てんさつび)とも。
受死日(黒日)に次ぐ凶日、すべての事に関して大悪日。
葬式を出すと災難に遭うといいます。
凶: 婚礼
五墓日(ごむにち ごむび)
五行の墓という意味。
十二支の丑・辰・未・戌は五行の土性にあたり、これら5つの日を五墓日といいます。
人が九星などと同じように生まれ持つ納音(なっちん)(生まれの性)がこの日にあたった人のみ、すべて凶。
凶: 土を動かす、葬送、墓を作る、種まき、旅行、祈祷。
この日に葬式を出すと墓を5つ並べることになるといわれ、近親で足りない場合は友人や遠縁まで集めて揃えるといいます。
帰忌日(きこにち)
「きいみび」「きしにち」「きこじつ」とも読み、帰忌(きこ)ということも。
帰忌とは天棓星(てんぼうせい)(りゅう座のβ,γ,ζ,ν星)の精のことで、この精が下りてきて人家の門の前に陣取り、住人が帰宅するのを妨害する日を帰忌日といいます。
正倉院に納められた具注暦に記載されているほど、歴史が古いものです。
凶: 旅行先からの帰宅、里帰り、貸し出した物の返却など。
血忌日(ちいみにち)
「ちいみび」「ちこにち」とも。
血忌とは梗河星(こうかせい)(うしかい座のρ,σ,ε星)の精で、中国ではこの3つの星を「殺忌」「日忌」「血忌」と呼び、殺伐の気を司るといわれます。
具注暦にも記載があります。
凶: 鍼灸、狩猟など血を見ることや、奉公人の雇い入れ。
重日(じゅうにち)
「じゅうび」「ちう日」とも。
この日に行なったことは善悪に関わらず重なって生じるといわれ、吉事は良いが凶事には用いてはいけないとされます。
凶: 婚礼、治療、種まき、葬送、仏事。
吉: 衣類の裁断や着始め、商品・不動産の買い入れ、入学、預金。
復日(ふくにち)
「ぶくび」とも。
重日と同じく、この日に吉事を行なえば吉が重なり、凶事をすれば凶が重なります。
凶: 婚礼、葬送。
吉: 旅行、金銭の貸し出し。
大吉: 善行。
天火日(てんかにち)
「てんかび」「五貧日」とも。
陰陽五行説では火を天火、地火、人火に分けますが、そのうちの天火は天の火気がはなはだしいという意味です。
凶: 棟上げ、屋根葺き、家屋の修造などをすると必ず火災に遭う。
他のことには障りなし。
地火日(じかにち)
「ちかび」とも。
天火日に対するもので、大地の火気がはなはだしいという意味です。
凶: 柱建て、井戸掘り、種まき、墓を築く、葬送など土を動かすこと。
大禍日(たいかにち)
三箇(さんが)の悪日(万事に用いてはならない日)のうちのひとつで、大凶悪日。
口舌を慎み、家の修理、船旅、葬送などは固く忌まれる日です。
この日に人を訪問すると口に災いが生じるとか、この日に始めたことはのちに争いを起こすなどといわれます。
狼藉日(ろうしゃくにち)
三箇(さんが)の悪日(万事、とくに仏事に用いてはならない日)のうちのひとつ。
万事に凶で、この日を用いると百事みな失敗するといわれます。
滅門日(めつもんにち)
三箇(さんが)の悪日(万事に用いてはならない日)のうちのひとつ。
大悪日で何事も成就しないといわれます。
もしもこの日に新しい事をすると、一家一門みな滅ぶとされます。
時下食(ときげじき)
「下食時(げじきどき)」とも。
ある特定の日の特定の時間(一辰刻)のみを忌みます。
天狗星(てんこうせい)の精が下りてきて食事をする時間のことをいい、この時間に人間が食事をすると天狗星の精に食べ物の栄養をみな吸い取られてしまうため、この時間の飲食を忌むといいます。
凶: 種まき、沐浴、草木を植えること。
歳下食(さいげじき)
天狗星の精が食事をする日のこと。時間は関係ありません。
天狗星の精は60日目に1日、1年に6日地上に降りてきて終日終夜食事をします。
軽い凶日なので、ほかの暦注の吉日に重なれば忌む必要はないとされます。
逆に凶の暦注と重なると、大凶になります。
凶: 大食、大酒、種まき、草木を植えること。
この日に食あたりをすると、長患いになるといわれます。
凶会日(くえにち)
「くえび」「凶会」とも。
陰と陽の気の調和がうまくいかない日なので、万事に忌むとされます。
この日に吉事を行なうと、凶事に転換されてしまいます。
『枕草子』に記述があります。
往亡日(おうもうにち)
生きて滅ぶという凶日。
凶: 遠出、移転、婚礼、神社仏閣への参拝など。
天赦日(てんしゃにち)
「てんしゃび」「天しゃ」とも。
百神が天に昇る日で、天が地上の万物を育て養って罪を許す日です。
最上の大吉日でほかにどのような凶があっても関係なく、とくに婚礼、開店に大吉。
神吉日(かみよしにち)
「かみよしび」「神よし」とも
万事、神事に関することに吉とされる日です。
日本独自の暦注。
吉: 神社の参拝、祭礼、祖先の祀りなど。
大明日(だいみょうにち)
天地開通して、すみずみまで太陽が照らして大きく開ける日で、大吉日。
唐の時代の大明暦に初めて記載されました。
すべての吉事、善行によく、とくに婚姻、移転、旅行、建築にいいとされます。
鬼宿日(きしゅくにち)
「きしゅくび」とも。
二十八宿の中の最大吉日です。
とくに名誉、長寿を祝うのに最上の日で、火の神を祀るのにもいい日です。
天恩日(てんおんにち)
「天おん」とも。
『簠簋内伝(ほきないでん)』の「七箇の善日」のうちのひとつ。
天の恩恵により、万物が成育して福徳が得られる日です。
吉事に用いて大吉だが、凶事には用いてはならないとされます。
吉: 昇進、婚礼。
ただし、ほかの凶日と重なると、半吉になります。
母倉日(ぼそうにち)
「母倉」とも。
『簠簋内伝(ほきないでん)』の「七箇の善日」のうちのひとつ。
地の恵みにより万物が成育して繁栄する日です。
とくに婚礼が大吉。
吉: 普請、造作、開業。
月徳日(つきとくにち)
「がっとくにち」「月とく」とも。
『簠簋内伝(ほきないでん)』の「七箇の善日」のうちのひとつ。
その月の福徳を司る日です。
万事障りのない日で、家の増改築、土に関わることに吉日で、とくに女性にとって良い日です。