京料理
「京料理」の呼称は新しい
京料理とは、有職料理・本膳料理・懐石料理・おばんざいが融合した、京都の料理のことです。
京都は海から遠く、魚介類の料理は江戸などほかの地域のものに見劣っていました。
逆に、水がいいことから味のいい野菜が多くとれました。
京料理はこれらの豊富な野菜を生かすことで発展しました。
「京料理」の呼称は新しい
京料理という呼び名は、明治以降に誕生しました。
戦前から、京料理や大阪料理はまとめて関西料理と呼ばれていました。
大正12年(1923)の関東大震災以降、関西の料理人が関東に移動しました。
京料理という言葉を、京都の料理の意味で積極的に用いられるようになったのは、昭和に入ってからです。
料理屋は宴席のできる寺院の茶屋からはじまる
京都市の現在の円山公園一帯には、江戸時代は時宗の寺院が多く集まっていました。
当時は、寺では出せない動物性の料理を、茶屋では出すことができました。
そこで、大人数を収容できる座敷を持った寺院が経営した茶屋が、料理屋のはじまりになりました。
そのうち嘉永2年(1849年)創業の「左阿彌」のみが、現在も営業を続けています。
京料理は趣向と共に発展
京都の料理屋は18世紀に発達しました。
高瀬川沿いにある料理屋では、川から鯉などをすくい上げてその場で調理する生洲料理が人気を集めました。
また調理も客の目の前でする即席料理(割烹)も現れました。
天保年間(1830~44年)、南禅寺の門前で高橋嘉兵衛が「瓢亭」を始めました。
当時、煮抜玉子(瓢亭玉子)が名物料理となり、「奇」な料理と喜ばれました。
仕出し料理でおもてなし
京料理の特色に、「仕出し料理」があります。
仕出しは、材料や調理道具を客の調理場へ持ち込んで、その場で料理して振る舞います。
仕出し料理屋には、茶懐石いっさいを引き受けたり、商家での客のもてなし料理を任させる店もあります。
客先に赴き、客先の主人の好みにあった器や食材を用意し、場を壊さぬタイミングで料理を始め、配膳をします。
出前や店屋物とは違い、客先と一体になって、おもてなしをする料理です。
京のおばんざい
「おばんざい」とは京の家庭料理です。
華やかで豪華な料亭の京料理とは違って質素倹約を旨として、地元の京野菜をふんだんに使った料理です。
中京の商家では「おきまり料理」といって日によって決まった料理が出されました。
毎月1日は小豆ご飯と紅白なますとにしん昆布。
15日は小豆ご飯と紅白なますといもぼう。
月末はおから。
8の付く日はあらめと揚げの煮物です。
また、葵祭の頃は鯖寿司。
祇園祭の頃には鱧料理。
盆には精進料理。
秋のえびす講には商家では、ねぎとはんぺんの汁物が出されたそうです。
このように料理が決まっていると献立で頭を悩ませることがないので、「おきまり料理」は京都の合理的精神の現れだともいわれます。