選日って何?

暦に書かれている暦注の中で、六曜、十二直、七曜、二十八宿、九星、暦注下段に含まれないものをまとめて「選日(せんじつ)(撰日)」または雑注といいます。

天使と悪魔の間で頭を抱える人
illustration by イラストAC | ちょこぴよ

一般に、以下に説明する9つのものを指します。

八専

「はっせん」または「はちせん」と読みます。
「八せん」とも。

毎日の十干十二支を陰陽五行の木火土金水に配当していくと、全部で60日(六十干支)のうち、十干十二支と五行とで同じ気が重なる日が12日あります。

六十干支の終わりの方の12日間(壬子から癸亥の間)に、同一の気となる日が8日固まって発生します。

同一の気となる日のことを「専一(せんいつ)」といい、この専一の8日間を特別に「八専」と呼びます。

また、同一の気でない残り4日を「間日(まび)」といいます。

日の十干十二支と五行の配当
日の十干と五行 日の十二支と五行 この日は…
壬=水 子=水 壬子 八専
癸=水 丑=土 癸丑 間日
甲=木 寅=木 甲寅 八専
乙=木 卯=木 乙卯 八専
丙=火 辰=土 丙辰 間日
丁=火 巳=火 丁巳 八専
戊=土 午=火 戊午 間日
己=土 未=土 己未 八専
庚=金 申=金 庚申 八専
辛=金 酉=金 辛酉 八専
壬=水 戌=土 壬戌 間日
癸=水 亥=水 癸亥 八専

六十干支は1年に約6回循環するので、八専も年に6回、約72日間あります。

暦には、壬子の日に「八専始め」「八専に入る」、癸亥の日に「八専終わり」などと書かれています。

もとは軍事上の忌日とされていましたが、江戸時代には鍼灸の忌日として庶民に広まりました。

のちに、破壊的な物事を始めること、婚礼、法事などの仏事に凶の日とされるようになりました。

また、八専の日は冥界を司る神々が天に昇るので、神事や仏事を行なっても意味がないといわれます。

八専の初日が晴れだと八専中は雨が続く、反対に八専の初日が雨だと八専中は晴れが続くといわれ、旅立ち・家の修繕・婚礼などの日取りを決めるのに用いられました。

八専の間日は、何をしても差し支えないとされます。

十方暮

「じっぽうぐれ」または「じゅっぽうくれ」と読みます。
「十方ぐれ」とも。

これも八専と同じく六十干支を五行に当てはめていくのですが、同気ではなく相剋する10日間を指します。

日の十干十二支と五行の配当
日の十干と五行 日の十二支と五行 この日は…
甲=木 申=金 甲申 相剋(金剋木)
乙=木 酉=金 乙酉 相剋(金剋木)
丙=火 戌=土 丙戌 相性(火生土)
丁=火 亥=水 丁亥 相剋(水剋火)
戊=土 子=水 戊子 相剋(土剋水)
己=土 丑=土 己丑 比和(同気)
庚=金 寅=木 庚寅 相剋(金剋木)
辛=金 卯=木 辛卯 相剋(金剋木)
壬=水 辰=土 壬辰 相剋(土剋水)
癸=水 巳=火 癸巳 相剋(水剋火)

暦には、相剋する最初の甲申の日に、「十方暮に入る」「十方ぐれ入り」などと記載されます。

十方暮の日は、天地の気が相互に敵対するため八方ふさがりになりやすく、万事何をしてもうまくいかないので静かに暮らすべき厄日とされます。
とくに、婚姻、新しい事、遠出、移転、相談事、建築は凶とされています。

江戸時代には重要な凶日とされていたようです。

暦に間日(同一の気にあたる己丑と、相生にあたる丙戌)の記載はなく、間日であっても天地の気の相剋の影響を受けるので、10日間ずっとうまくいかない日とされます。

三隣亡

建設中の木造家屋の基礎部分
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「さんりんぼう」と読みます。

三隣亡は、二十四節気で区切られた1ヶ月の中の、決まった十二支の日に配当されます。

三隣亡の配当
正月(立春の日から啓蟄の前日まで) 亥の日
二月(啓蟄の日から清明の前日まで) 寅の日
三月(清明の日から立夏の前日まで) 午の日
四月(立夏の日から芒種の前日まで) 亥の日
五月(芒種の日から小暑の前日まで) 寅の日
六月(小暑の日から立秋の前日まで) 午の日
七月(立秋の日から白露の前日まで) 亥の日
八月(白露の日から寒露の前日まで) 寅の日
九月(寒露の日から立冬の前日まで) 午の日
十月(立冬の日から大雪の前日まで) 寅の日
十一月(大雪の日から小寒の前日まで) 亥の日
十二月(小寒の日から立春の前日まで) 午の日

十二支の活動が凶変するため、この日に棟上げや建築を行なうと、三軒隣まで焼き滅ぼされてしまうといわれます。
大工さんにとっては大凶日で、この日に高いところに上ると怪我をするともされます。

三隣亡の歴史は新しいもので、幕末から六曜と一緒に庶民に浸透していきました。
明治の改暦後にも「おばけ暦(無許可で発行された偽暦)」に記載され、現在に至ります。

しかし、江戸時代の古い書物には「三輪宝」とあり、「屋立てよし」「蔵立てよし」と書かれるめでたい日と書かれていたそうです。

いつの間にか「よし」が「あし」に誤転記されてしまったため、「三輪宝」が「三隣亡」に造語されたとも考えられています。

ほかに、この日は人倫道徳の根源となる三輪宝神の縁日で、物が発生し、成育し、実を結ぶというしくみに従う「三輪宝」という日であるとする暦もあります。

「三輪宝」の日は先祖供養をする日で、建築造作などの植物の生育を害して滅ぼす行為をしてはならないとされます。

天一天上

「てんいちてんじょう」または「てんいってんじょう」と読みます。

六十干支を五行に当てはめた、癸巳から戊申までの16日間を指します。

この期間は、天一神(てんいちしん)(艮神)という方角の神さまが天に上って、悪さをしないので吉日とされます。
どの方角へ進んでも良しとされ、とくに相場師が縁起を担いでこの日を用いました。

最初の天一天上の日を天一太郎といい、この日に雨が降るとその後の天候がよくないとされて1年の豊凶が占われました。

また天一太郎の日は結婚などには最高の吉日とされます。

天一神は十二神将の主将で、別名「地星の霊」「天女の外神」「中神」と呼ばれる荒ぶる神です。

天一神は、44日間天から下りて8つの方角を巡り、45日目に天上に帰って16日間天上にいて、また下りてくることを規則正しく繰り返します。
これを天一神遊行(ゆぎょう)といい、天一神の留まる方角は禁忌とされ、この方角に当たる者には祟りがあるといわれました。

この方角へ向かって出産したり、争い事をすると大きな災いや大厄を招くとされます。

天一神の留まる方角のことを「塞(ふさがり)」といい、塞に向かって物事を起こすことを忌みました。これを「物忌み」といいます。

この方角へ外出する場合はまっすぐ向かわず、別の方角から大回りして進まなければなりませんでした。これを「方違え」といいます。

平安時代の文学に出てくる「物忌みの方違え」は、この天一神を避けるために行なわれました。

天一天上の間、天一神の代わりに日遊神(にちゆうしん)が下りてきて、人家に留まって祟りを起こすから、家を綺麗にしなくてはならないとされます。

三伏

「さんぷく」と読みます。

初伏・中伏・末伏の3つの総称で、いずれも凶日です。

夏至のあと、3回目の庚(かのえ)の日を初伏、4回目の庚の日を中伏、立秋以降1回目の庚の日を末伏とするのが一般的です。

十干の庚は、五行の金(か)の兄(え)と同じなので金性です。
夏は五行では火の気が盛んな時期なので、金は火に伏せられる、すなわち負けてしまうので凶とされます。

その凶日のうち、三伏は大凶です。
旅行、種まき、療養、婚姻、子作り、事業開始、移転などはすべて慎むべき日とされます。

一粒万倍日

「いちりゅうまんばいにち」「いちりゅうまんばいび」と読みます。

月によって決まった干支の日が、一粒万倍日になります。

一粒万倍日の配当
正月(立春の日から啓蟄の前日まで) 丑・午の日
二月(啓蟄の日から清明の前日まで) 酉・寅の日
三月(清明の日から立夏の前日まで) 子・卯の日
四月(立夏の日から芒種の前日まで) 卯・辰の日
五月(芒種の日から小暑の前日まで) 巳・午の日
六月(小暑の日から立秋の前日まで) 酉・午の日
七月(立秋の日から白露の前日まで) 子・未の日
八月(白露の日から寒露の前日まで) 卯・申の日
九月(寒露の日から立冬の前日まで) 酉・午の日
十月(立冬の日から大雪の前日まで) 酉・戌の日
十一月(大雪の日から小寒の前日まで) 亥・子の日
十二月(小寒の日から立春の前日まで) 卯・子の日

ひと月に複数回あるため、ほかの暦注の吉日に重なったら効果が倍増、凶日に重なったら効果が半減するとされます。

文字通り、ひと粒の籾が万倍もの実を実らせるという大吉の日です。

この日はすべてのことを始めるのに良い日で、とくに仕事始め・開店・種まき・金銭の貸し出し・投資に吉です。
しかし、金や物を借りるとのちのち苦労が増えるとされます。

また、この日に善行を積み重ねると、万倍になって自分に戻ってくるともされます。

明治以降の暦に登場しました。

不成就日

「ふじょうじゅにち」「ふじょうじゅび」と読みます。
「不浄日」とも。

月と日の十二支と五行の組み合わせを基準にして、8日間隔で割り当てられるので、ひと月に4回あります。

この日は、文字通り一切の事が成就しないので、事を起こすのに良くないとされます。

とくに、結婚、子どもの命名、開店、移転、契約などに凶です。
また、思い立ちや願い事も凶とされます。

大土・小土

「おおつち」「こつち」と読みます。
「大つち」「小つち」とも。

犯土(つち)とは六十干支の土と、五行の土性が重なった日のことで、庚午から丙子の7日間を「大土(大犯土)」、翌日の丁丑を間日(「中犯土(なかつち)」)にして、次の日の戊寅から甲申までの7日間を「小土(小犯土)」といいます。

犯土の期間は、金神(こんじん)(金の精で殺戮の神 「暦の吉凶 方位神 | 歳事暦」で説明しています)の遊行日とも、土公神(どくじん)(土を司る神 「暦の吉凶 その他の暦注 | 歳事暦」で説明しています)が本宮にあるため土の気がもっとも盛んになるともいわれます。

この期間は、文字通り土を犯してはならない日なので、井戸掘りや墓を築くこと、種まき、土いじりはいっさい慎むこととされます。
伐採した竹木は腐りやすいと言い伝えもあります。

出産も禁忌とされていますが、前もって徳利に水を汲んでおいて、産湯に混ぜると災いを免れるとされます。